部屋着の隙間

貴方だけには観せましょう。

推し活と自己矛盾

 

 

 

オタクってなんなんでしょう

推し活ってなんなんでしょう

自分の中でハマっているもの

推しているコンテンツ

それらに対する距離感や熱量に正誤は無いはず

無いはずなのにあれこれ考えて

嬉しくなったり

悲しくなったり

自己肯定感と自己矛盾

推しの閾値は?

推しの消費期限は?

 

 

先日のISF11(アイドルマスター765プロ&ミリオンライブオンリー同人誌即売会)にて、自分の好きなサークルさんが出した新刊がとても刺さったので感想とか。

 

 

f:id:owewewewe:20231127235335j:image

タイトル:当方真壁瑞希のオタクですがこの度出禁になりました。

サークル:13月の雨

作者様:うてぃ

もうタイトルが凄い。なんてよみたくなるタイトル。二重の意味で。

 

There are bad apples in every bunch

どんな集団にも悪い人がいる可能性はあると思います

それが自分の推しを応援している集団だとしても

 

 

 

 

 

事前のサンプルで凄い惹かれてて絶対読みたい一冊だったんですけど、中身を読んだらまあすごくて。自分の中でどうしてもまとめておきたかった。

 

 

 

前置き

同人誌即売会にほとんど参加した事がない自分の物凄く自分勝手なイメージで申し訳ないのですが、こういった即売会の場で頒布される本の多くは明るい話が多くて、シリアスな話は少ない印象があります。

またこれも凄い勝手な偏見になるんですけど、アニメや漫画でもシリアス展開はあまり好まれないイメージがあります。

自分はどうかというと、正直結構好きなんですよねシリアス展開。

もちろん意味のないシリアス展開は好みませんが、その展開を踏まえてストーリーが広がったり、カタルシスを感じられるのが好きです。

 

何事も都合が良くて明るい面ばかりではなくて、暗い面や汚い面があると思うんです。都合の良いお話よりも、そういった暗い面も見せてくれるお話の方が自分に強く何かを残してくれる事が多いし、綺麗だとも思ったりします。

神様的な視点で両方の面を知っている自分に自惚れているだけかもしれないですね。ただ自分の気持ちとしてそっちの方が好き、好みだというだけ。つまりエゴ。

(人に何かを与えない自分勝手は全力でしていくべきだと思う)

 

以下本のストーリー、結末に触れる内容になっています。ネタバレ注意!!!

 

感想

前置きが長くなってしまいましたが、お察しの通りこの本のストーリーは決して明るいものではありません。真壁瑞希に執着した1人のオタク(以後彼女)のお話で、タイトル通り出禁になります。

出禁といっても経緯がチケットの転売や他のお客さんに迷惑かけたりと彼女が100悪いので当然だし可哀想でもないのですが。

身も心も削って、なんなら周りの人間も削りながら瑞希に執着する様を観る事ができます。その姿はまさに推しに狂ったオタクそのもの。

瑞希に執着する前にも他場でやらかしてるようなので根本的にあかん感じなのでしょう。でも終始狂ってるって訳でもなくて、初めは普通にライブに参加していたり、出禁後も稼ぎのための夜職を上がって昼職で頑張ろうとしていたり、全てがあかん感じでは無いんですよね。チケ買うためのお金は真っ当に稼いでますし(犯罪的な行為はしてなかったから…)。そこのバランス感というか、キャラクターの描き方が凄い魅力的でした。あんまり好きな表現じゃないんですけどリアルな感じ。

 

作中で周りに迷惑かけまくってる彼女の行いは受け入れる事はできませんが、推しへの向き合い方は理解できる部分もありました。

途中、自称強火オタクが出てきて彼女に絡んでますが、見事に拒否されてて笑って感じです。自分は好きなもの、好きなことに向き合う時はあんまりその熱量や距離感を評価したくなくて、ましてやそれに酔ったり人と競ったり比較しだしたらもう。彼女が「したいことしてるだけ」って自称強火オタに返してましたが、そういった周りの事とか知らんし(比較的な意味で)自分はしたい事してるだけ的な気持ちは偶に自分もなるので自称強火オタを払ったシーンはスカッとしました。

もちろん社会で生きていく上で自分の為に人を傷つけたり迷惑かけるのは違うと思うので、彼女の行いの色々は理解できても受け入れられませんが。

 

そんな作中やらかしまくってる彼女ですが、自分が読んでて一番うへぇってなったのは意外にも彼女の行いではなく彼女を解釈した皆様の言葉でした。自分のことを分かったように言われるのは気持ちのいいものではありませんが、人が人のことを勝手に解釈してあれこれ言うのを見るのもあまり気持ちの良いものではありませんね。でも人に自分のことを知ってほしいという気持ち、承認欲求は人間誰でもあると思いますし、自分にもあります。感じる自己矛盾。

また普段自分の推しに対して勝手に考察、解釈している姿はまさに彼女を囲う皆様のようです。これまた自己矛盾。

こういった自己矛盾は自分の好きを追いかけているとすぐに並走してくるのでタチが悪い。

 

やらかした結果無事(?)出禁になった彼女は夜職も上がり瑞希からも距離を置きます。

(夜職の源氏名について、みくは未来…ってコト!?って他の方の感想ツイート(作者様がリツイートしてた)で見かけたんですけど、なるほどなって思いました。自分の『未来』のため働く名前は『みく』。『みく』を辞めて『未来』も消える。)

 

瑞希から離れて数ヶ月後、彼女は偶然にもフリーライブ中の瑞希と遭遇します。この時の衣装と振りから披露していたのは恐らくソロ曲のインザネ(...In The Name Of。 ...LOVE?)でしょうか。

 

初めて遠くから見る瑞希。最前で見ようが遠くで見ようが、何処で見ても瑞希の輝きは変わらなかった。

 

それに気づいた彼女はまた瑞希を応援するようになりました。

 

だって。

 好きって、

   知ったんです。

 

(インザネの歌詞見て鳥肌たちました。狙ってたら見事すぎません…??)

 

そして人生で一番の幸せをくれた推しに感謝しておわり。

ハッピーエンド。

あとがきに続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃないんですよね。

 

あとがきの直前に恐らく彼女のと思われる独白があり、あとがき後に彼女のさいごが2頁描かれておわります。

 

あとがきからの描写はそれまでのハッピーエンド感から一転してとてつもないバッドエンド感が漂ってます。でも個人的には嫌いじゃないですこの結末。

(映画とかでエンディングがいい感じに終わったのにエピローグで殴ってくるのすごい好きなんですよね…)

 

最初、何でこうなったか???だったんですよね。ただ、自分なりに考えた結果納得したのもあってかなり好きな終わり方です。

 

最後の1頁に仕掛けがあって、これも最初なんでだ???って感じでしたが2周目に理解しました。最後の1頁をめくると、写った言葉が沈むように消えていき最後は真っ黒に。お洒落すぎる…

 

 

 

最後の最後まで楽しませていただきました。

最近自分の推しとの距離感や熱量について悩む事が多かったので、この本は本当にタイミングが良かったというかなんというか。

悩んでいるからこそ今読めて良かったと思います。

 

アイマスは主にアイドルやプロデューサーからの視点で話が展開していくので、2次創作でもそちら側の視点で描かれる作品が多い印象です。こちらの本の様にアイドル側の描写をほとんどせず、ファン視点で話が展開していくのもより一層アイドルの生きている世界が感じられて良いなって思いました。

 

 

 

推しについてあれこれ悩む前に、まずは自分と向き合うべきだなって。

そして自分で処理しきれないなら人に頼るのが大事

 

 

 

あとがき後について

一番考えたあとがき以降の展開。

考察というのもおこがましいので以下妄想。

 

公演の入場

チケットの購入

全てはあの輝きのため

何もかもが自分の全てだった

それらを否定されてしまった

いや、違う

自分の手で否定した

それを約束した

誓ったはず

全てを否定したのに

なのに、なんでまたあの輝きを享受しているのか

あれが自分の全てじゃなかったのか

いやまだ残ってる

残ってた

じゃあそれを取り上げて

おしまい

 

あの時出会わなければ気づかないままだったのに

出会ったことで気づいてしまった

 

 

 

読んでいて彼女は自己完結型なのかな、と思いました。周りに左右されず自分の考えを貫く。人に頼らず協調性が無い。彼女の行動からそういった印象を持ちました。

 

自己完結型が自己矛盾に陥ったらどうなるのでしょう。

周りに吐き出す事もなく、自分から生まれたそれを延々と自分の中で処理し続ける。それは紛れもなく自分から生まれたもので排斥もできない。

 

やがて濾過できなくなったそれは溢れ

溺れてしまう